バーチャルオフィスを不動産業で利用することは困難である
宅建業では契約者のみが利用できる独立した事務所が固定された場所であり、存在するということが原則と必須となります。毎回座る場所が変わるフリーデスク形式や、パーティションで簡単に区切られ多人数で使用するシェアオフィスの形式では、免許の申請が通らないため不動産業を始めることができません。そうなるとバーチャルオフィスの活用も不動産業運営の要件を満たさないため利用することができないでしょう。 自宅を利用して宅建業免許を取得し、会社の所在地や接客時はバーチャルオフィスを使うという営業形式も、通常は不動産業を運営するにあたっての要件を満たさないため実現することは難しいです。
不動産業を営む場合の条件のひとつとして「報酬額の掲示」があり、お客様が来社されたときに見えるように場所の工夫も必要です。その点でもバーチャルオフィスでは実現が難しいでしょう。オフィスのレイアウトは、契約時にレンタルオフィス側と打ち合わせがあるので、報酬額の掲示場所について必ずしっかりと伝えましょう。 また、帳簿の備え付けも必要です。事業を行うのであれば基本的に帳簿はどの業種もつけるものですが、不動産業では「仲介・媒介等の場合、事業年度の末日に帳簿を締めてから5年間保存」という期間も定められています。 そして、「自社が売主となっている物件等の取引に関しては、事業年度の末日に帳簿を締めてから10年間保存」のこの2つが条件となっています。これらは個人情報でもあるため、鍵のついた金庫などでの保管がマストです。バーチャルオフィスでは、金庫を備え付けることも難しく、活用することは困難でしょう。
レンタルオフィスの活用とバーチャルオフィスの懸念とは
不動産業を開業するにあたって実際に営業を行う場所や立地は事業主にとってもお客様にとっても大事な要素のひとつでしょう。どんな事業でも言えますが、できるだけ初期費用は抑えたいものですし、不動産業でもバーチャルオフィスを活用することはできないか?と考える方も多いでしょう。他事業ではバーチャルオフィスの活用ができることも多いですが、不動産業では運営要件に満たさないためバーチャルオフィスの活用が難しいということも踏まえ、最近ではレンタルオフィスを利用し不動産業を開業する方が増えてきています。ビルの一室を借りるよりは費用が抑えられますし、バーチャルオフィスと違い、本店の所在地として登記ができるものも多い場合によってはビルの一室を安く借りられるのと同じということもあり得ます。
レンタルオフィスで不動産業を運営する場合、行政庁の担当者の方は次のようなポイントを懸念しています。 もしバーチャルオフィスだったら、事務所としての実体がない可能性が考えられること。 不動産業での契約の場合、通常の賃貸借契約等と異なることから、使用する権限が不安定であること。 宅建業免許の申請者以外の法人や個人など、多数の人がオフィスを共有している可能性が考えられること。 事務所内に形式的に接客できる場所を作っているだけで、実際には外部の人がオフィス内には入れないルールになっている可能性が考えられること。 申請者の事務所に入るために、他社もしくは個人のオフィスを通過しなければならない可能性が考えられること。 上記を踏まえ、バーチャルオフィスで宅建業の免許を取得することはできても、不動産業を運営するにはそもそもバーチャルオフィスの活用は不可能であることが考えられます。バーチャルオフィスを不動産業で活用しようと申請をしても、審査が通らないので気を付けましょう。